小さな港町に住む子猫のミントは、ある日ひとりで浜辺を散歩していた。波打ち際で転がる缶詰を追いかけていたら、突然どぶんと大きな水しぶき。砂浜すれすれに、巨大なヒレが現れた。
姿を現したのはホオジロザメ。しかし目つきはどこか優しい。サメは人間の言葉を理解し、名を「ガブリエル」と名乗った。怪我をして浅瀬に迷い込んだという。ミントは怖がりながらも、落ちていたタオルを使って彼を海へ押し戻した。
数日後、ミントが浜辺に行くと、ガブリエルが再び現れた。お礼に“大海原の旅”へ誘いに来たのだ。ミントは小さな足でガブリエルの背びれにしがみつき、波の彼方へと飛び出した。初めて見る水平線は、まるで金色の布のようにきらめいていた。
旅の途中、沈没船の残骸の中で宝石のような貝殻を見つけたり、深海の魚たちと踊ったりした二匹。しかし、巨大な渦の怪物「クログモ」が現れ、海底を震わせた。ミントはガブリエルの鼻先を叩きながら叫んだ。「全速前進にゃー!」。サメと子猫の息ぴったりの連携で渦を切り裂いた。
港に戻ったとき、ミントの毛は潮でカールし、ガブリエルの背にはカモメが三羽勝手に乗っていた。住民たちは最初あ然としたが、すぐに港町の大騒ぎへ変わる。ガブリエルは再会を約束し、深い海へ戻った。ミントは胸を張って言う。「次は北極のアイスフィッシュに会いに行くにゃ」。冒険はまだ始まったばかりだった。
